ブドウの研修(フランス)目次

1.フランスのブドウについて
2.フランスの品種
3.仕立て方
4.剪定方法

1.フランスのブドウについて

・ブドウの産地
 フランスの生食用のブドウの生産は南部で盛んに行われており、南西部のモワサック地区と、南東部のアヴィニョン周辺地区が二大産地です。南西部ではCHASSELAS(シャスラ)等の白系のブドウがメインで、南東部ではMUSCAT DE HAMBOURG(ミュスカドゥハンブルグ)等の黒系のブドウがメインです。南東部ではミストラルという強い北風が吹くため、房に擦り傷がつきやすく、傷の目立ちにくい黒系の生産が盛んになったそうです。

・需要と供給
 フランスでは年間約20万トンの生食用ブドウを消費します。そのうち約4万5千トンをフランス国内で生産し、10万トンをイタリアから、5万トンを他国から輸入しています。スーパーに行ってみると、確かにフランス産のものより多くイタリア産のブドウを見かけます。イタリアはフランスに比べ人件費が安く、また気候も温暖なので、安いブドウを大量に作れるようです。

・コストについて
 フランスでは、ブドウが非常に安く手に入ります。スーパーで1kgあたり2〜3€で売っていて、一房だけ買うなら、日本円で100円〜200円程度で買えます。フランスのブドウの栽培は、花穂整形や、ジベレリン処理、摘粒といった、ブドウの房を整えるような作業は一切しないので、日本に比べ、同じ面積あたりの作業時間が約1/10と、大変短いです。人件費は日本より少し高いくらいなのですが、作業時間が短いため、ブドウの生産にかかるコストが日本よりも大幅に低くなります。

・種無し品種について
 フランスの人はブドウを皮ごと、種まで食べてしまいます。現地で日本の巨峰を試験的に栽培している人がいましたが、巨峰も皮と種を食べていました。ただ最近の若者には種無しのブドウが人気で、消費が増えてきているそうです。日本ではジベレリンという薬品を使用して種無しブドウを作りますが、フランスではジベレリンを使用せず、自然の種無し品種を栽培します。現在フランスで栽培されている主な種無し品種は、CENTENNIAL(サンテニアル)、SERNA(セルナ)、EXALTA(エグザルタ)の3種類で、これからの注目品種です。

・病気と虫
 フランスのブドウ栽培で問題となる主な病気は、Botritys(灰色カビ病)、Mildiou(べと病)、oidium(うどんこ病)などで、どれも日本でも問題となる病気です。虫は、Ver de la grappe(ヴェルドゥラグラップ)という、小さい蛾のような虫が問題になるらしいのですが、これは現地では見られませんでした。日本にもいるのかどうか、不明です。あと、房にコシュニール(カイガラムシ)の糞がついて黒くなっているものが結構あり、これも日本なら商品にならないのでは、という感じでしたが、ひどいもの意外は商品として出していて、あまり気にしていないようでした。

2.フランスの品種

・MUSCAT DE HAMBOURG(ミュスカドゥハンブルグ)
 フランスで人気第一位の品種。黒色、中粒で、その名の通りマスカット香が強く、美味。南東部で栽培が盛ん。
ミュスカドゥハンブルグ

・CHASSELAS(シャスラ)
 フランスで人気第二位の品種。白色、小粒。特にモワサック地区のシャスラは古くからのブランドのブドウで、他に比べ少し値段が高い。
シャスラ

・ALPHONSE LAVALLEE(アルフォンスラバレー)
 黒色、大粒の品種。味はそれほど特徴はないが、大玉のため、市場で人気がある。
アルフォンスラバレー

・DANLAS(ダンラス)
 白色、中粒。味はさっぱりしていて、シャスラよりも粒が大きく、食べ応えがある。
ダンラス

・CENTENNIAL(サンテニアル)
 白色、大粒。種無し品種の中で最も普及している。マスカット香があり、皮も薄く、食べやすい。
サンテニアル

・SERNA(セルナ)
 赤色、小粒。最近栽培が始まった種無しの品種。フランスではあまり赤系品種はみかけないし、種無しで味も美味しいので、将来有望?
セルナ

3.仕立て方

@Vertical(バーティカル)
 伝統的な方法。地上40cmくらいに結果母枝を水平に伸ばし、結果枝を垂直に上に伸ばす。地上60cmから2mぐらいまで5本ぐらいの番線がはわせているので、結果枝を交互にくぐらせて上まで固定する。収穫位置が低いので腰が疲れるし、棚線に房が絡みついて収穫しずらい。株間約1.2m。
バーティカル1

バーティカル2

ALyre(リール)
 バーティカルと仕立て方の基本的な構造は変わらない。バーティカルが主枝が一本だったのに対して、主枝二本置くやり方。結果枝を少し角度持たせて横から見るとVの字になる。日本のマンズワインレインカット栽培に似ている。主枝が二本になって結果枝の本数が増えるので、面積あたりの収量が増える。多少角度を持たせているので、房が手前にぶら下がり、バーティカルよりも収穫しやすい。株間0.6〜1.0m。
リール

BT-bord(ティーボード)
 高さ1.5メートルに結果母枝をTの形のように横にはわせて、そこから横に垂直に結果枝を伸ばす方法。横と正面から見てもTの形になる。日本の一文字型短梢剪定に似ているが、違うところがある。
 1)結果枝を結果母枝に対して垂直に固定しないところ。自由に伸ばしたまま
 2)剪定は、Tの分岐部分の根元の結果枝を一本横に倒して残して翌年の結果母枝とし、後は切  るという長枝剪定(guyotという剪定法)。日本は結果枝の根元が飛び出してきたり、主枝が太くなるが、更新するので細いまま。
 
 株間は1〜2m。(品種により異なる)Verticaに比べブドウの房の位置が高くなるため、作業がしやすく、作業時間が短縮できる。また、房の位置がVerticalやLyreより高いため、温度は1℃低くなる。同時に湿度も低くなるため、病気にかかりにくくなる。
T-bord1

T-bord2

4.剪定方法

@guyot(ギュイヨ)
 剪定時に、主枝と結果母枝の分岐部の一番根元にある結果枝を一本残して今年の結果母枝を切り、残した結果枝を横に倒して翌年の結果母枝にする。日本で言う、長梢剪定に似ている。剪定時に枝を倒して固定する必要があるため、時間がかかる。花芽がつきにくい品種向き。花芽が充実し、大きい(長い)房ができるため、収量がコルドンより多い。サンテニアル、ダンラス、イタリアにはこの方法。
ギュイヨ

Acordon(コルドン)
 短梢剪定 二芽を残して切る。  基本的に1本の木で、片側3つの結果母子で2つの芽があるので12本の結果枝になる。剪定時は、結果母子の位置はそのままで良いので、手を入れる必要がなく時間がかからない。房はguyotに比べ、コンパクトになる。色がきやすいため、ミュスカダンブルグ等にはこの方法。
コルドン

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